
ひな祭りといえば雛人形を飾ってちらし寿司や白酒などの飲食を楽しむ女の子のお祝い行事ですね。
そのお雛様に飾られている菱餅と呼ばれる三食の菱形の飾りを見た事ある方も多いと思います。
ですが、あれを食べた事がある方ってもしかしたら少ないのかもしれません。
飾り物としてプラスチックなどで出来ているものも多くある為、本来は食べるものと認識していない方もいらっしゃいます。
3色の色彩と菱形の形で見た目にも可愛らしいもので、女の子の為の行事であるひな祭りにはとても相応しいですがその見た目の為だけにあるという事は無いでしょう。
そんな菱餅をひな祭りという日に飾り、食べる事にはいったいどんな理由があるのでしょうか?
あの色や色の順番にもちゃんとした理由がありました。
目次
ひな祭りにひし餅を飾るのはなぜ?
ひな祭りでは定番となっているひし形の三色飾り『ひし餅』
このひし餅がひな祭りで定番となっているのはこのような理由からでした。
ひな祭りでひし餅を食べるようになったのは昔の中国の『上巳節』と呼ばれる厄祓い行事に倣ったものです。
そもそもひな祭りの始まりも中国のこの『上巳節』に倣ったものだとされています。
この上巳節では『母子草(ハハコグサ)』を混ぜた草餅を食べる風習があった為、日本でもひな祭りには厄祓いの為この草餅を食べるようになっていました。
※母子草とは別名『御形(ゴギョウ)』とも呼ばれる春の七草のひとつです。
七草粥でもおなじみですね。
しかし、日本では母子草を混ぜ餅をつくのは『臼と杵で母と子をつくのは縁起が悪い』という理由から、母子草の代わりに蓬(ヨモギ)が使われるようになりました。
蓬(ヨモギ)にはもともと邪気を祓うという謂れがあった為、ひな祭り本来の意味である『厄祓い・邪気祓い』にも通じる薬草だったのです。
ひし餅とは厄祓いの為に食べるという草餅がルーツだったのです。
そしてひし餅としてひな祭りに飾られるようになったのは江戸時代に入ってからの事です。
この頃に、菱(ヒシ)の実を入れて作った白いお餅が加えられ緑と白の2色のひし餅が出てきました。
そしてお正月に飾る鏡餅に倣って、ひな祭りにはひし餅を飾るようになったと云われています。
当初は2色で飾っていたひし餅が3色に変わったのは明治に入ってからの事だそうです。
最初は緑一色でひし形ですらなかった草餅が、このような流れで現在のようなひし餅へと変化していったのですね。
しかし、そこには本来の意味合いである『邪気祓い』だけでなくその他の理由・願いもあるのです。
ひし餅の色や順番と形に意味はある?
昔の中国で草餅を食べていた風習が、日本に入ってきたのがひし餅の始まりでしたね。
そしてその当初は『緑一色』でした。
この草餅が何故現在のような3色のひし餅へと変わったのでしょうか?
それぞれの色に込められた意味を説明していきます。
ひし餅の色に込められた意味
ひし餅の色は一般的に3色です。
その3色とは【桃・白・緑】が基本となります。
桃(ピンク)色の意味
ひし餅の桃色はクチナシの実で色付けしている為です。
この桃色は名前の通り桃の花を表したもので、魔除けや厄除け・邪気祓いの意味が込められています。
またクチナシは薬草でもある為、解毒作用があるとされています。
桃色の意味をまとめると
薬草=クチナシの実
効能=解毒作用
意味=魔除け・厄除け・邪気祓い
白色の意味
白色のひし餅にはヒシの実が入っています。
植物の菱は非常に繁殖力が高いため、子孫繁栄の象徴としての意味があります。
また中国ではヒシの実を食べる事によって千年もの時を生きた仙人がいるという伝説があり、そのことから長寿の象徴としての意味もあります。
またヒシの実には血圧を下げる効果・がん細胞の増殖を抑える効果があるとされています。
そして白色には昔から【純白・清純】とまっさらで清いという意味があります。
また、この白色で雪の大地をイメージしています。
白色の意味をまとめると
薬草=ヒシの実
効能=血圧を下げる・がん細胞増殖の抑制
意味=子孫繁栄・長寿
緑色の意味
ひし餅の緑色はヨモギの色です。
ヨモギはハーブの女王と呼ばれる程、健康に良いとされる薬草です。
その効能は多岐にわたり、造血作用・デトックス効果・整腸作用・免疫力アップと挙げればキリがないほどの効能が期待できる薬草です。美容やダイエットにも効果があるとされています。
また、ヨモギはその独特の香りの為、古来より厄除け・魔除けになるとされていました。
そして緑色は新緑が芽吹くのをイメージしています。
緑色の意味をまとめると
薬草=ヨモギ
効能=ハーブの女王と呼ばれる程の多岐にわたる効果
意味=魔除け・厄除け
ひし餅の色の意味まとめ
ひし餅の色の意味を表にしてまとめました。
桃色 (クチナシ) |
桃の花のイメージ | 解毒作用 | 魔除け 厄除け 邪気祓い |
---|---|---|---|
白色 (ヒシの実) |
雪の大地のイメージ | 血圧を下げる がん細胞の増殖の抑制 |
子孫繁栄 長寿 |
緑色 (ヨモギ) |
新緑の芽吹くイメージ | ハーブの女王 美容やダイエットにも効果有 |
魔除け 厄除け |
ひし餅の色の順番に込められた意味
ひし餅の色に込められた意味は前項で説明しました。
この意味があるからこそ、ひし餅の色の順番にも決まりがあり意味があります。
そしてこの並び順は2通りあると云われています。
それぞれご紹介していきたいと思います。
桃色⇒白色⇒緑色
上から順番に【桃色⇒白色⇒緑色】の場合の意味は
『残雪の下には新緑の芽が息づいていて、雪の上には桃の花が咲いている』という春の情景を表現しています。
桃色⇒緑色⇒白色
上から順番に【桃色⇒緑色⇒白色】の場合の意味は
『雪の上には緑が芽吹き、やがて花が咲く』という春に向かっていく情景を表現しています。
色の順番の意味
ひし餅の色の順番には上記のように2通りありますが、どちらの場合も『冬から春へと向かう時の流れから成長を祝う』という意味があります。
さらに『桃(赤)色は生命のチカラ・白色は大地のチカラ・緑色は木々のチカラ』を象徴しており、これら自然の力を体内に取り込むことで病や災いを追い出し健康に過ごせるようにとの願いが込められているのです。
ひし餅がひし形な意味
ひし餅の形がひし形である理由は諸説ありすぎてどれが本当なのかは今現在分かっていないのが実情です。
ですので、ここでは信ぴょう性のありそうな説3つをご紹介していこうと思います。
ひし餅の白の部分にも使われているヒシですが、この植物は繁殖力がとても高く子孫繁栄の象徴でもあります。
そして中国ではヒシの実を食べる事によって1000年もの時を生きた仙人の伝説があり、長寿の象徴ともなっています。
これらの縁起を担いでヒシの葉の形であるひし形を模したという説
説2
ハートという形が昔の日本にはまだ無く、心臓の形を表す為に風水で使われていた『心臓を表すひし形』を模した説
数々の薬草の効果や縁起の良い意味を、人間の重要な器官である心臓にもたせ食す事により健康を祈ったとされる
説3
ひし形は大地を表す図形であり、『桃の花・新緑・雪』と春に向かう大地を表しているとする説
この他にも様々な説がありますが、ひとつだけ確実に言えることがあります。
ひし餅は色・並び順・形すべてに意味があり、そのどれもが健康と幸せを祈るものであるという事です。
さいごに
ひし餅はただの飾りでは無く、ひな祭りらしい縁起の良い意味が込められていました。
その上女の子のお祝い行事に相応しい鮮やかな色彩で目にも楽しめる定番食です。
雛人形に飾るだけであまり気にもしないひし餅ですが、これからは見方が変わるかもしれませんね。
ひな祭りと定番料理の意味や由来と雛人形の名前や飾る時期に処分方法まで【まとめ】